Home > メニュー > 連載コラム > 今こそブランディングだ!

今こそブランディングだ!

早いもので、このコラムも今回で20回目を迎えました。
前のシリーズも合わせると28回目、早くも2年2ヶ月が経ちました。
ネタは尽きないのですが、なかなか思うように文章が進まない時もあり、締め切りに間に合わなくて担当の方にご迷惑をかけてしまった事もありました。
しかし、ここまで続けてきた甲斐もあって、最近はメールやmixiで、コラムを読んで頂いた方から感想を頂くことも多くなり、嬉しく思っています。
継続は力なり! 今回は原点に戻って、ブランディングをテーマに書いてみようと思います。





一般的に多くの人は変化を恐れる。いつもと同じが一番安心なのである。したがって、今うまくいっていなかったとしても、うまく行っていた時の幻想にしがみついてしまう。
たとえ今うまくいっていなかったとしても、うまくいっていた時の栄光にとらわれてしまい、新しいことを生み出すことが出来ずに立ち止まってしまうのだ。

世界的不況が叫ばれる中、人々のマインドも大きく二極化しているように感じることが多くなった。特に中小企業の経営者や個人事業者の方に、そのマインドの違いが如実に現れているようだ。

簡単に言うと、守り派と行動派である。
前者は、『景気が悪いから、今は新しいことをせず守りに入ろう』という人。後者は、『景気が悪いから、どうせ今までと同じことをやっていてもうまくいかないし新しいことをやってみよう』という人である。

景気が悪いから何もしないで景気が良くなるのを待つのか、それとも、景気が悪いからこそ新しい事に取り組んでみるのか。私は後者が正しい選択なのではないかと確信している。
もしこのまま景気が良くなるのを待って、現状を変えずに守りに入っていたとして、この景気がいつ回復するのかを確実に予想するのは不可能だろう。また、景気が回復するといっても、ある日突然景気が良くなるということはあり得ないのである。徐々に景気が良くなっていくなかで、守りに入っている人が、常に革新的に行動していた人に勝てるだろうか?その時に顧客や取引先は、守りに入っていた会社を選択するだろうか?そう考えると、やはり今は、新しいことを創造し実践しなければ生き抜けない時代だと言える。

不景気の時代に生き残るのと、不景気の時代を生き抜くのでは大違いである。
生き残るということは、現状の問題点を改善できないままに騙し騙しその場を凌ぐことだが、生き抜くというのは、問題に対する解決策を見出し前向きに行動することである。 新たな収益がないままに今までの蓄えを消費してこの不景気から生き残ったとしても、そこから新しい何かが生まれる可能性は皆無なのだ。生き残ることは具体的な打開策ではない。

それに対して、この不況に対する解決策を見出し、小さくても良いから新たな収益を生み出す展開が出来る人は、同じように別の新たな収益を生み出すことも容易に出来るだろう。
景気が悪い時に結果を出すのと景気が良い時に結果を出すのとでは、景気が良い時に結果を出すほうが簡単に決まっている。景気が悪い時に結果を出すことが出来る人は、景気が回復した時には、もっと簡単に結果を出すことが出来るだろう。

そう考えると、毎日の取り組み方も変わってくるはずだ。特にこの不況のおかげで、市場の動向は読みやすく、この時代にあった新しいニーズを見つけやすくなっている。今までどおりの方法ではなく、この時代にあった方法、そして景気が回復した後までを見込んだ新たなプランを考えてみてはどうだろうか?

今回は、経営者視点で書いているが、これは経営者だけにあてはまるものではない。
会社員であれば、自分の会社が今の時代を生き抜くためにどうすれば良いのかを考えてみると良いだろう。就職を控えた方であれば、自分がこの時代を生き抜いて自分が求める人生を手に入れるにはどうすれば良いのかを考えてみてはどうだろうか。それが会社や社会から評価されることに繋がるはずだ。

松下幸之助さんの言葉でこのような言葉がある。『不景気の時は頭を使え!景気が良い時は銭を使え!』経営の神様と言われた松下さんらしい名言ではないだろうか。

日本はゴールデンウィークの真っ只中だが、今年は16連休の会社が現れた。ゴールデンウィークも会社を休めない人にとっては、羨ましい話かもしれないが、手放しで羨ましがってもいられない状況である。裏を返せば、ゴールデンウィークを長期連休にすることで、人件費を削減するための企業の苦策なのである。

そんな中、私の元には中小企業からのブランディングに関する新規の相談が増えてきている。それも、経営コンサルタントや人事コンサルタントをしている知り合いやクライアントを通じての紹介ばかりなのだ。なぜこのようなことが起こっているのかというと、様々な業界において、業績が伸びている会社と伸びていない会社の違いは、不況になる前から会社や事業のブランディングに力を入れていた会社と入れていなかった会社の違いなのだという。

しかも、信じられない事に、今まで業界ナンバーワンだったような会社が今年に入ってから、一気に業績が悪化しているケースが多いというのだ。

ITバブルに乗って、自然に売り上げが上がってきたような会社がここにきて苦戦しているという。原因としては、ITをフル活用し大量の予算をかけて、その場その場で顧客を集めてくるような方法で売り上げを上げてきた会社が、ここにきて、大量の予算をかけられなくなったと共に、消費者がITに慣れてきたおかげで今までのやり方では以前のような大きな結果を得られなくなってきているということが言えるようだ。

たとえば、以前なら、インターネットの広告を見て売り上げに貢献していたユーザーが、広告に見慣れてしまったおかげで、広告の効果が極端に下がっているのだ。
今までなら、GoogleのAdSenseやOvertureなどのクリック課金の広告からも、ある程度の直接的な売り上げを見込めたものが、今はユーザーが、そのような広告に慣れてしまって、以前のようには興味を持たなくなってしまっている。

いまだにSEOの相談を受ける機会は多いが、いまさらSEOでは意味がないのである。
これからは、SEOに頼らず、例え検索エンジンでは上位に表示されなかったとしても、自らサイトを探し出したり、誰かの紹介でサイトを訪れてくれるような仕組みが必要なのである。
すなわち、それがブランディングである。

簡単にいうと、ユーザーや取引先企業が何かを求めた際に、すぐに頭に浮かぶ会社や商品、サービス、人を作らなければならない。

その状況を作り上げるためには、もちろん長い歳月を費やさなければならない。
長期での戦略を練り、その戦略に従ってプランし、実行し、改善しながら、ユーザーとの信頼関係を築いていく必要があるのだ。

近年のアメリカ型経済の崩壊に伴い、四半期単位で短期目標を設定し、短期目標を達成するために取り組むことに重点を置く経営戦略の落とし穴は明白である。
私も会社員時代は、大手の外資系IT企業3社に勤めたので、状況はよく理解できるのだが、今こそ長期視点で目標を設定し、安定したブランドを作りあげなければならない時代が到来したと言えるのではないだろうか。
例え四半期での目標に到達しなかったとしても、その積み重ねによって長期での目標が達成されるのであれば結果オーライなのである。
そして、そのような長期視点で、顧客との信頼を勝ち取った会社というのは、例え不景気になったとしても、景気や競合の動きに左右されることなく、安定した独自の事業を展開できるのではないだろうか。

今回は、そのために一番コストをかけず、一番手軽に取り掛かれる手法に注目してみたい。
それは、他よりも優れている点を強調するのではなく、他とは決定的に異なる点を強調して独自ブランドを作り上げるということだ。

他との差別化が明確になっていれば価格競争は起きないのである。それが消費者にとって必要不可欠なものであれば景気にも左右されない。
逆に、他よりも優れている点で競っていると、似たような商品やサービスとの間で価格競争が起こり、安売り合戦に巻き込まれてしまう。景気が悪くなったときには、消費者は多少の優位点は無視して安いものを選択するだろう。
他者と決定的に異なる点を打ち出すことで、安売り合戦には巻き込まれない、不況にも強い会社が出来上がるのである。

そして、そこがきちんと出来ていれば、○○といえば○○という強いブランドが出来上がるのだ。

かつての卵市場において、商品内容の差別化は難しく価格での差別化が一般的だった。
多くの卵メーカーが、10個130円くらいの価格を設定し、他よりも安い卵をスーパーのチラシに載せて、消費者の心を捉えることに力を注いでいた。
スーパーとしても安売り卵を買いに来る客が増えれば卵以外の商品も売れてスーパー全体の売り上げに繋がるため、10個入り1パック98円の卵などを前面に出し、消費者にとって卵=スーパーの安売りというのが一般的な常識だった時代にも関わらず、ヨード卵光は『ヨードとビタミンEをふんだんに含んだ体に良い赤玉』を売り文句に6個入り1パックで300円という、安売り卵の数倍の価格設定で市場に乗り込んだ。
今では安売りの卵には目もくれず、ヨード卵光しか買わないファン客も増えて、以来、後続のブランド卵が続々と現れる中、ヨード卵光だけはブランド卵の中でも別格を保っているのである。
ちなみに、現在、日本においてブランド卵(特殊卵)といわれる商品は数千以上におよぶが、その中でもヨード卵光は常にトップブランドをキープしているのだ。

もう一つの例をあげてみよう。

かつて、ビールという市場には長い間キリンが君臨しており、多くのメーカーがトップの座をつかむことが出来なかった。その中でサントリーは、一度の撤退を経験した後に再びビール市場に参入し、サントリーモルツでビール市場の首位をつかもうと、品質改良やパッケージ改良、ポジショニングなどのマーケティングを強化し、大量の広告費を投じたが、40年以上の間、ビール銘柄としてのブランド最下位を脱却することは出来なかった。
一方、当時経営が悪化し厳しい局面を迎えていたアサヒは、ビール市場全体での首位争いは捨てて、ドライビールという新たな市場を作り、アサヒスーパードライを売り出した。

結果としてアサヒは、ドライビール市場での成功を収めて奇跡的な復活劇を見せただけにはとどまらず、わずか15年の間でアサヒスーパードライは、ビール市場全体のトップブランドにまで上り詰めた。そして、総売上高でも首位のキリンに迫る勢いを見せているのだ。

ちなみに、ビールの表示に関する公正競争規約にラガービールの定義は含まれているがドライビールという定義は含まれていないにも関わらず、アサヒスーパードライのヒットを受けて、競合各社がドライビール市場に参入し、通称ドライ戦争と言われる販売戦争にまで発展した。ビール業界最大手のキリンも、キリンドライというビールを販売したが、結局アサヒスーパードライにかなわず市場から撤退するに至った。90年代に発売したキリン一番絞りは、アサヒスーパードライのシェアを凌駕することが出来たが、同時に自社ブランドであるキリンラガービールの市場も脅かしてしまう結果に陥ってしまった。
他社もサッポロドライ、サントリードライという銘柄で参入したがうまくはいかず、結果としてドライ市場はアサヒの独壇場となり、他社はドライビール市場からは退いて、発泡酒そして第三のビールという新たな市場に力を入れることになる。
すでに作り上げられた市場に参入して優位性を謳っても、そこから首位に返り咲くのは、例え業界最大手のキリンだったとしても至難の業だったという分かりやすい例ではないだろうか。

ヨード卵光とアサヒスーパードライの共通点は何だろうか?
二社に共通しているのは、すでに出来上がっている市場で、他社と競い合うのではなく、独自のアイデアを組み合わせて新しいニッチ市場を作りあげた事である。
そして、その新しい市場で独自のブランドを作り上げ、他社の追随を許さないマーケット展開をしたことではないだろうか。

この機会に、他者と決定的に違う点を導き出してみるのはいかがだろうか。

Home > メニュー > 連載コラム > 今こそブランディングだ!

Search
Feeds

Page Top