前回は、私の仕事である『ブランディング』について書きましたが『ブランディングという言葉を初めて知った』『楽しそうな仕事ですね』『どんな仕事なんですか』というメールを何通か頂きましたので、今回はブランディングの中に含まれる要素について書いてみます。
前回の記事の中で、ブランディングとは『ロングターム・マーケティング』であり、『価値を高めるための戦略』だという事を書きましたが、もう一つ付け加えるなら、『消費者が選択しなければならない理由を導くための戦略』ともいえます。
『ブランディング』という言葉自体が、何かの実務を現すわけではなく、ブランディング=ブランド構築という目的を達成するために、中長期に渡り調査と調整を繰り返しながら様々な手法を交えて社会的評価を高めていくのです。
当然、ブランディングプロジェクトに関わる中には、それだけでも一つの会社がつくれそうなミッションもいくつか含まれています。
例えば、以下のような業務です。
・ 市場調査
・ マーケティング
・ PR
・ 集客
・ 広報資料作成
・ 販促物作成
・ Webサイト構築
実際、専門的にこれらの業務を行っている会社も沢山あるのですが、ブランディングに関わる会社やコンサルタント、プロデューサーは、長期を見越した上で高い目標を設定し、スケジュールとビジョンを組み立てながら、一番効果的なタイミングで、これらの業務を遂行していくのです。
もちろん、全てを自社や自身で行うわけではなく、大きなプロジェクトなどでは、専門の会社に依頼したり、専門のスタッフをチームに加えたりしながら、みんなで力を合わせて目標の達成を目指します。
なので、ブランドマネージャーやブランディングコンサルタントは、全体を統括する、いわばプロジェクトマネージャーのような位置づけになるのではないでしょうか。
さて、このような様々な業務を行う中で、ブランディングに関わる人達が一番大事にしているのは、『目先の結果にこだわらない』という事です。
私はこれを『ドミノたおしの法則』と呼んでいます。
私は、幼い頃、ドミノが大好きだったのですが、きっと誰もが、幼い頃『ドミノでギネスにチャレンジ』などのテレビを見たり、実際に積み木などでドミノを作ってみたりした事があると思います。
私は、ドミノで重要なのは以下のような要素なのではないかと考えています。
1、作っている途中でたおしてしまわないように注意する
2、入念な下準備でなるべく沢山の仕掛けを作る
3、たおれたあとの美しさ
4、たおれるときの驚き
5、要所要所に『魅せ場』を作る
いかがでしょうか?
【作っている途中でたおしてしまわないように注意する】
これは、ドミノでは当たり前の常識ですよね。
でも、幼い頃、友達とドミノで遊んでいると、途中で我慢が出来なくなって、たおしてしまう子がいました。
気持ちはとっても分かりますよね。
ドミノに限らず、ある程度、何かを作り上げたときに『早く結果が見たい』という衝動と『でも、もうちょっとやれば、もっと良くなるかも』という気持ちとの葛藤が起こる事はありませんか?
でも、ここは我慢が重要です。
途中でコケて、一発屋で終わってしまうのは最悪のパターンですからね。
【入念な下準備でなるべく沢山の仕掛けを作る】
大人になると、『一般常識』や『ルール』にとらわれてしまい、どうしても柔軟な考え方をしづらくなってしまいますが、幼い頃は、そんなものにはまったくとらわれず、思いつくままに自由に色んな事をやってしまいます。
例えば、台の上から落としたり、ドミノとはまったく関係のないものやロボットなどを持ってきて、それも仕掛けの一部にしたり。
テレビで見たドミノでも、沢山の仕掛けがありましたよね。
ロケットのように飛んでいったり、階段の上から落ちてきたり、ボールなどを使って連鎖的な動きをしたり。
この数年、ピタゴラスイッチというNHKの番組が大人にも子供にも人気ですが、あのような自由な発想がドミノの楽しみの一つになります。
【たおれたあとの美しさ】
ドミノでは、たおれる前の並んでいる状態のときには、とくに美しさは必要ありません。
むしろ、一見、ずさんに並んでいるドミノが、らせん状やうずまきにたおれていく様子が楽しいのです。
むしろ、たおれる前と後のギャップが大きければ大きいほど、たおれるときの美しさが強調されて、より多くの人の印象に残ります。
【たおれるときの驚き】
ドミノでは作っている段階では、何を作っているのかを分かる必要はありません。
テレビで見たドミノの最大の魅せ場はなんといっても『隠し絵』ではないでしょうか。
作っている途中では何を作っているのかがわかりませんが、たおれていくと富士山の絵や、その時代を表す絵などが姿を現します。
何が出てくるのかな?というワクワク感と、その期待を裏切らない驚きが、人々の心を一瞬にして奪います。
私が見たなかで印象的なのは、ドミノがたおれていく中で、『世界一周旅行』を表現していたり、『恐竜時代から現在までの情景』などを表現しているものもありました。
ここまでくると、もうロマンですよね(笑)
いつも感心するのは、あんなに広い場所を、小さな一つ一つのドミノを埋め尽くしていく過程で、『隠し絵』の全体図を構成して支持している人の存在です。
構想から準備、そして実現まで、入念なチェックと慎重な作業を重ねる事で、最後には沢山の人達に感動を与えるのです。
『木を見て森を見ない』という例えがありますが、まさにドミノでも、全体を見る統括者がいるからこそ、一つ一つの作業が生きてくるのですね。
【要所要所に『魅せ場』を作る】
そして、これらの仕掛けを随所に盛り込んで、沢山の魅せ場とサプライズを提供することが、ドミノの醍醐味となります。
特に、沢山の人に感動を与えようと思うと、一つの仕掛けで全ての人に感動を与えるのは難しいかもしれませんが、そのような仕掛けをいくつも盛り込むことで、より多くの人に感動してもらうことができるのです。
人にはそれぞれ、好き嫌いや向き不向きがありますので、より幅広いパターンで、仕掛けを盛り込んでいくことが成功の秘訣です。
そして、『地道に着実に進んでいくところ』と、『派手な演出』を緩急をまじえて表現する事で、全体が際立つのです。
すっかり、ブランディングの話から、ドミノの解説になってしまいましたが、ブランディングのプロジェクトは、まさに『ドミノだおし』と同じで、目標を達成するために十分にタイミングを見計らいながら下準備を進めて、入念にミッションを重ねながら仕掛けを作っていきます。
いくら素晴らしい『隠し絵』が完成したとしても、それだけでは十分な効果を得る事は出来ませんよね。
『ロケット』も『うずまき』も、それだけを見ると、なんか安っぽい感じがするかもしれません。
ブランディングにおいても、集客やPR(メディア露出)などに成功したとしても、それらが単発で終わってしまうと、一時期のブームにしかなりません。
テレビで『あの芸能人はいま』というような特集を組むことが時々ありますが、一世を風靡した話題ほど、ブームが過ぎ去った後は、商品価値が下がってしまいやすいものです。
ブランディングは、価値を高める事を目的としていますので、一時期のブームで終わらないように、定期的に話題を作っていく事が重要です。
そして、今までの目標を達成したとしても、また更なる目標を設定して、常に上を目指していくのです。
余談になりますが、1年くらい前に、講演会の中で『ドミノたおしの法則』についてお話したとき、最後のQ&Aのコーナーで、『積み木くずしについて質問したいのですが』と参加者の1人から真顔で質問された事がありますが、『積み木くずし』ではなくて『ドミノたおし』ですので、間違わないようにしてくださいね(笑)
今回は、文字だけでの説明なので、ちょっとイメージしづらい部分もあったかもしれませんが、おそらく、今回ご紹介した『ドミノだおしの法則』の考え方は、商品やサービス、会社、人など、さまざまなところで応用できる考え方だと思います。
楽しい仕掛けを重ねてみてはいかがでしょうか。